薬剤師の自習室 開催報告と備忘録もかねて
11/1に実施した薬剤師の自習室の内容を共有したいと思います。
まず、今度発売される過活動膀胱治療薬「ビベグロン錠」について、
メーカーパンフレットにのっていた第3相試験の論文を読んでみました。
参加された薬剤師の中には論文抄読会初参加の方もいて、ざっくりとPECOの考え方、
真のアウトカム、代用のアウトカムの考え方をおさらい。
「ランダム化比較試験を10分で吟味するポイント」チェックシートに沿って進めました。
論文の内容については誰かがまとめてくれるのを期待してここでは割愛します(他力本願ですいません・・)
ついでに、最近「くすりのかたち」という本を読んだので、ついでにビベグロンとミラベグロンの構造について考えてみました。
アドレナリンβ3作動薬ということですから、アドレナリンの骨格に似ている部分がありますね。(左側のベンゼン環からOH基のあたり)
さらに、β3受容体にくっついて作動させるための骨格が真ん中のベンゼン環から右側の構造なんだそうです。
くわしくはこちら https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/6/50_533/_pdf
まだ「くすりのかたち」を全部読んでいないのですが、かなり参考になりますね。
次に、実際にトレースレポートを書いた症例をもとに、ディスカッション形式で勉強してみることにしました。
この症例をみて、なにか薬剤師として考えることはありますか?ということでディスカッションしました。
いろんな意見がでました。
参加者の声
・利尿剤投与によって水分が奪われ便秘につながっているのではないか。
・フェキソフェナジンの処方意図が分からない
・ランソプラゾールはバイアスピリンによる胃腸障害防止の目的でいいのか?
・マグネシウム錠が寝る前服用では胃酸が少ないため効果が不十分なのではないか?
・ランソプラゾールが夕食後だと胃酸を抑えるため、マグネシウム錠とは間隔をあけたほうがいいと思う。
また、PPI投与によってVB12が減るといった報告があるとのご意見もありました。それについては論文がみつかったので後日読んでみたいと思います。
ディスカッションのあとでこの症例の考え方の1部を紹介。
酸化マグネシウムの生体内における反応は
胃内 : 2HCl + MgO →MgCl2 +H2O
腸管内 : MgCl2 + 2NaHCO3 → 2NaCl + Mg(HCO3)2である。 生成物Mg(HCO3)2が腸管内の浸透圧を高めて腸内に水分を引き寄せることで排便を促すという機序である。
しかし、酸分泌抑制剤を併用した場合は上記の反応がおこりにくく、 Mg(HCO3)2の生成が減少するため、酸化マグネシウムの作用が減弱することが予想される。
要するに酸化マグネシウムとPPIの相互作用が起きている。そのため服用時間の変更や多剤への変更の提案が望ましいのでは?ということでした。
今回、実際トレースレポートを書いた症例を提示してディスカッションしましたが、意外に面白かったですね。発表のトレーニングにもなりますし、なにより一人で悩むより何倍もの気づきが得られるのは素晴らしいことだと思いました。
この方式は次回以降も続けたいと思います。参加してくださった3名の方には感謝申し上げます。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。